はじめに
2026年6月最終週、米国マーケティング界隈から届いたニュースは、一見バラバラに見えて、実は同じ問いを突きつけてくる。「ブランドって、いったい何者であるべきなのか」――。愛国心をブランドの核に据える動き、AIがコンテンツ流通の地図を塗り替えつつある現実、そしてCannes Lionsで浮かび上がったクリエイターとオムニチャネルの交差点。今週はこの3つを軸に、日本のマーケターが明日から使えるヒントを探ってみたい。
重要ポイント1: 愛国心はもはやキャンペーンではなく、ブランドのDNAになった
Brand Keysの創業者Robert PassikoffがMarketing Diveへの寄稿で指摘したのは、シンプルだけど刺さる事実だ。消費者が「愛国的なブランド」を定義するとき、マーケターが想定しているより、ずっと広い文脈で判断しているという。国旗を使うとか、「Made in USA」を叫ぶとか、そういう話じゃない。
彼が言うのは、愛国心が単発キャンペーンの衣装になった瞬間、消費者はそれを見透かす、ということ。逆に、ブランドの価値観・採用・サプライチェーン・コミュニティへの関わり方まで一貫している企業は、明示的に「愛国的」を名乗らなくても信頼を勝ち取る。
日本市場への置き換え
これ、日本でも起きている。「日本製」「地元産」を前面に出すブランドは増えたが、製造拠点だけが日本でサプライヤーの労働環境や地域貢献がブラックボックスのままなら、Z世代はすぐ気づく。彼らはSNSで調べるし、友人のレビューを信じる。
- ブランドの「らしさ」は広告より採用・調達・コミュニティ施策で証明される
- 単発の周年キャンペーンで愛国心や地元愛を演出しても、バックグラウンドが伴わなければ逆効果になるリスクがある
- 「一貫性」こそが、現代の消費者がブランドに求める最大の信頼指標のひとつ(要確認:Brand Keys 2026年調査の詳細数値は原文ソースで確認を)
個人的には、これは「ブランドパーパス」議論の焼き直しじゃなく、もう一段具体的な話だと思う。パーパスを「言う」ブランドはたくさんいる。「行動で示す」ブランドがどれだけあるか、そこが問われている。
重要ポイント2: GoogleのAIモードがレシピSEOを変え始めた——コンテンツ戦略全体への示唆
Search Engine Landの報道によると、GoogleがAIモードでのレシピ表示に新しいビジュアルトリートメントを導入し、パブリッシャーのページへの誘導を強化する方針を打ち出した。GoogleのRobby Steinが公式にアナウンスしたもので、「AIモードがパブリッシャーにとってより友好的に」という方向性を示している。
これ、料理サイトの話だと思って流すと痛い目を見る。
なぜ全コンテンツマーケターが注目すべきか
AIモードの登場以降、「検索結果でAIがまとめてしまい、サイトへの流入が減る」という懸念が業界を揺るがしてきた。今回のGoogleの動きは、少なくともレシピカテゴリでは「AIがコンテンツを吸収して終わり」ではなく「AIが入口になってパブリッシャーへ送客する」設計に修正しようとしているシグナルだ。
- AIモードにおける「ビジュアルトリートメント」は、構造化データ(Schema.org)の整備が前提になる可能性が高い(要確認:Google公式ドキュメントで最新仕様を確認)
- レシピで機能するなら、製品レビュー・ハウツー・比較記事など「実用的なコンテンツ」全般に同様のロジックが波及する可能性がある
- 逆に言えば、AIに「引用される価値がある」コンテンツを作れているかどうかが、今後のSEO競争力を分ける
ファーストパーティデータの観点でも面白い。AIが送客してくれるとしたら、その後のユーザー体験でどれだけデータを取れるか、どれだけ関係を深められるかが差別化になる。Cookieが使えない世界で、「AIからの流入をどうナーチャリングするか」は、これから議論が活発になりそうなテーマだ。
クイックピック: Cannes Lionsで見えたクリエイターとオムニチャネルの交差点
Marketing Diveのカンヌまとめ記事によると、今年のCannesで特に注目を集めたのがOpenAIの広告プラン公表と、Expediaのクリエイター起点の戦略だった。
OpenAIが広告市場に参入する意図を明らかにしたのは、単純に「新しい広告プラットフォームが増える」以上の意味がある。検索・コンテンツ・対話の境界が溶けていく中で、広告のフォーマット自体が問い直されるタイミングが近づいているということ。
Expediaのクリエイター戦略については、旅行という「体験」カテゴリでTikTokやInstagramのクリエイターを起用するのが今や標準になっているが、Expediaは単なる口コミ拡散ではなく、コマースとクリエイターを直結させるモデルを描いているようだ(詳細は要確認)。
Marketing DiveによるUlta CMOインタビューでは、CMOのKelly Mahoneyが語るブランドビルディングの考え方が興味深い。TikTok Shopとリテールメディアを組み合わせながら、文化的パートナーシップも仕掛けるという、複数のチャネルを「足し算」ではなく「掛け算」にしようとしている姿勢が伝わってくる。
ビューティー業界は特にZ世代との接点が多く、この構造を理解しているブランドとそうでないブランドの差は、今後さらに広がるだろう。
まとめと今週のアクション
今週の3つのトピックを貫くテーマは、「表面的な施策から、構造的な信頼構築へ」というシフトだと読める。
愛国心ブランディングは「見せ方」より「あり方」。AIモードのSEOは「書き方」より「設計」。クリエイターエコノミーは「起用」より「共創」。どれも、単発の施策をいくら重ねても追いつかない、土台の話をしている。
今週、手を動かすとしたら
- 自社ブランドの「言っていること」と「やっていること」のギャップをリスト化してみる。消費者が気づいているかどうかではなく、まず自分たちが把握する
- 自社のコンテンツで構造化データ(Schema.org)が適切に設定されているか確認する。AIモードの波が来る前に、技術的な土台を整えておく価値がある
- 使っているクリエイターとの関係を振り返る。「起用→投稿→終わり」になっていないか。共創の余地がどこにあるか、一度だけ話し合ってみる
地道だけど、これが一番効く。
出典
– Patriotism is no longer a campaign — it’s a branding strategy | Marketing Dive
– Google makes recipes in AI Mode more publisher friendly | Search Engine Land
– A cure for Cannes Lions FOMO | Marketing Dive
– Ulta’s CMO on blending brand building and omnichannel marketing | Marketing Dive
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