今週の美容・ファッション業界、動きが多すぎた
2026年7月第一週。正直、これだけニュースが重なる週も珍しい。シャネルが動いて、ミーガン・ジー・スタリオンが香水を出して、Beautycounterを立ち上げたGregg Renfrewが今度はGen Z向けブランドを仕掛けている。それぞれ単体でも十分な話題なのに、同じ週に重なるのは偶然じゃないと思う。業界全体が何かの転換点を迎えているような気配がある。
シャネルがシャルヴェを買収。ラグジュアリーの再定義が始まった
シャネルによるパリの老舗シャツブランド『シャルヴェ(Charvet)』の買収は、ファッション業界的にはかなり大きなニュースだ。シャルヴェはヴァンドーム広場に店を構える、オーダーメイドシャツの聖地。顧客リストにはウィンストン・チャーチルやドゴール将軍の名前が並ぶと言われる、いわゆる『知る人ぞ知る』系の極上ブランド。
シャネルがここを取りに行く意味は何か。個人的には、これはLVMHやケリングとは違う方向性でのラグジュアリー帝国の拡張だと読んでいる。大量生産・大量広告路線ではなく、職人技術と歴史の蓄積を静かに手中に収めていく戦略。シャネルはずっとそのスタイルを貫いてきた。
ここで思い出したのが、同じ週に出ていたAmouageの記事だ。オマーン発のフレグランスブランド、Amouageは創業から43年かけてようやく『一夜にして話題のブランド』になった。創業者の言葉が刺さる。『優れた香水を作りたいなら、創造に時間を与えなければならない』。
シャネルのシャルヴェ買収も、Amouageの43年も、根っこにある哲学は同じだと思う。本物のラグジュアリーは急げない、という話。
参考: Fashionista – Megan Thee Stallion Launches Fragrance, Chanel Acquires Charvet
参考: Beauty Independent – Why Time Is Amouage’s Ultimate Luxury
ミーガン・ジー・スタリオンの香水ブランド。セレブ発ブランドはもう飽きた?
正直に言うと、セレブが香水を出すというニュース自体には、もうあまり驚かなくなってしまった。リアーナのFenty、カイリー・ジェンナーのKylie Cosmetics……セレブとビューティーブランドの掛け合わせはほぼ定番フォーマット化している。
ただ、ミーガン・ジー・スタリオンに関しては少し注目したい点がある。彼女のファンベースはZ世代とミレニアル世代の境界線上にあり、かつTikTokとリアルのライブ文化の両方に強い影響力を持っている。香水は嗅覚というデジタルで伝えにくい感覚に訴えるカテゴリーだから、この層にどうアプローチするかが問われる。
SNSで画像と音楽で世界観を作ってきたアーティストが、匂いという非デジタルな体験をどう売るか。これは業界全体が注目しているテーマでもある。
同じ記事で触れられているGregg Renfrewの新ブランドも面白い。Beautycounterでクリーンビューティーの概念を米国に広めた彼女が、次はGen Zをターゲットにしている。クリーンビューティーの『次の章』を書こうとしているのか、それとも全く別の文脈で勝負するのか。詳細が出次第、また追いかけたい(要確認)。
参考: Fashionista – Megan Thee Stallion Launches Fragrance, Chanel Acquires Charvet
業界に『コピーキャット』はいらない。Susan Yaraが言い切った
Naturiumを立ち上げたクリエイター出身のブランドビルダー、Susan Yaraがインタビューで話したことが刺さった。『業界にはもうコピーキャットは必要ない』。
彼女はTikTok Shopの活用、Naturiumの成長、そして売ることが常に正解ではないというスタンスについて語っている。クリエイターがそのままブランドを作る流れは2020年代に急加速したけど、実際に長続きしているブランドは差別化できているところだけ。
Naturiumが評価されているのは、ナイアシンアミドやペプチドなど機能性成分をきちんと処方に落とし込み、科格的な根拠と価格のバランスを取ったから。ビジュアルだけ整えてバズらせる手法が通用しにくくなってきた、という手ごたえをYara自身も感じているんじゃないかと思う。
クリーンビューティー・スキンミニマリズムの文脈でも、『たくさん使う』ではなく『本当に効くものだけを使う』という消費者の目線は確実に厳しくなっている。
参考: Fashionista – This Beauty Founder Says the Industry Doesn’t Need More Copycats
ウィンブルドンとChloé。ファッションは『場所』との関係を取り戻している
少し軽めな話題だけど、Ellie GouldingがウィンブルドンでChloéのサンダルを選んだというニュースも興味深い。テニスボールポンプヒールというウィンブルドン発の新トレンドをあえてスキップして、ラッフルのポルカドットミニにマティルダサンダルを合わせた。
映画『Challengers』(チャレンジャーズ)にインスパイアされたヒールがウィンブルドンでリバイバルしているという文脈もあって、スポーツイベントとファッションの結びつきが今年も強い。K-Beautyの影響を受けたナチュラルメイクで会場に現れるセレブも増えていて、『スポーツ×ビューティー』の接点はまだまだ広がりそう。
参考: WWD – Ellie Goulding Skips Wimbledon’s Tennis Ball Pump Trend for Chloé Sandals
今週のまとめと、来週見るべきポイント
今週のニュースを並べてみると、ひとつの軸が見えてくる。『本物かどうか』という問いが、業界のあらゆる層で厳しく問われ始めている、ということ。
シャネルはシャルヴェという職人の歴史を買った。Amouageは43年という時間を武器にした。Susan Yaraは差別化のない模倣品に警告を鳴らした。セレブ発香水は感覚体験という土俵で勝負を仕掛けている。
来週注目したいのは、Gregg Renfrewの新Gen Zブランドの詳細と、Amouageが米国市場でどのようなローンチ戦略を取るか(要確認)。この2点は、クリーンビューティーと高級フレグランスの次の動きを占う上で外せない。
Taylor Swiftのブライダル風ビューティーモーメントも、WWDが特集を組むほどの影響力を持ち続けている。ウェディングビューティートレンドへの波及については引き続き追いかけたい。


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