AIスキルギャップ、CMOの4人に3人が「詰んでいる」
数字から入ると、Marketing Weekが2026年5月末に報じた調査が結構きつい。CMOの75%がAIスキルギャップを深刻な課題として認識しているというデータで、これは単なる「勉強不足」の話じゃない。チーム構成をどう変えるか、エージェンシーへの予算をどう組み直すか、という組織レベルの問題に直結している。
個人的に興味深いのは、この数字が『AIを使っていない会社』の話じゃないという点。すでにAIを組み込もうとしているマーケティング組織のトップが、「使えるはずなのに使える人がいない」という矛盾に直面している。ツールは揃ってきた。でも人が追いついていない。
じゃあ何が起きているかというと、主に3つの層でギャップが生まれている。
- データ解析・モデリング層:AIが出した予測や提案を検証できるアナリストが足りない
- クリエイティブ×AI層:生成AIをプロンプトレベルで使いこなせるクリエイターが育っていない
- 意思決定層:AIの出力を判断材料にできるディレクター・管理職が少ない
どの層も「完全にゼロ」ではないが、組織として回せる水準に達していないというのが実態のようだ(要確認:調査の詳細サンプル数・地域分布はMarketing Week原文で確認を)。
採用で解決しようとすると時間がかかる。だとしたら現実的な手は、既存チームへの集中的なアップスキリングと、外部パートナーとの役割分担の再設計になる。「AIコンサル入れたら解決」という話でもなくて、内製でどこまでできるかのラインを決めることが先決という気がする。
出典:Marketing Week – Three quarters of CMOs grappling with AI skills gap
American Eagleが「ブランドよりコンバージョン」に振り切った理由
アパレルの話をする。American Eagleが売上スライドを受けてマーケティング予算の重心をパフォーマンス寄りに移すと発表した。デジタル広告とインフルエンサーへの投資を増やし、バック・トゥ・スクールシーズンに向けてコンバージョンを刈り取りにいくという戦略だ。
これ、結構勇気のある判断だと思う。普通、売上が落ちているときって「ブランドの認知が足りない」という議論になって、ブランドキャンペーンに走りがちなんですよね。でもAmerican Eagleは逆で、「今すぐ買いたい人に届ける」方向にステアリングを切った。
背景にあるのはたぶん、バック・トゥ・スクールという季節イベントのタイミング感。ブランド認知は中長期でじわじわ効くが、8月の購買期限には間に合わない。だからこそ「今期のコンバージョンはパフォーマンスで稼ぎ、ブランドは別軸で育てる」という分離アプローチを選んだと読める。
インフルエンサーへの投資強化も文脈が見えてくる。Z世代・ミレニアル世代がターゲットのアパレルブランドにとって、インフルエンサーはもはや「認知ツール」だけじゃない。TikTokやInstagramのリンクから直購買につながる『パフォーマンス型インフルエンサーマーケティング』が機能し始めている。コンテンツ×コマースが地続きになってきた、という感じ。
日本のブランドマネージャーへの示唆でいうと、「ブランド vs パフォーマンス」という二項対立で予算を論じていると、タイミングを逃す。季節・イベント・購買フェーズに応じて比重を動かす「ダイナミックな予算設計」が実際には必要だということを、この事例は教えてくれる。
出典:Marketing Dive – American Eagle rebalances marketing toward performance as sales slide
Google AI Max、ブランド検索の「仕切り直し」を試みる
少し技術寄りの話。Googleが AI Maxキャンペーンにおいて、ブランド検索コントロール機能のテストを始めているらしい。ブランドトラフィックと非ブランドトラフィックをより明確に分離できるようにする、というのが趣旨だ(要確認:テスト対象アカウントの範囲はSearch Engine Land原文・Google公式で確認を)。
これが何を意味するか。検索広告の世界では長らく「ブランドキーワードはROIが高いから効率的に見えるが、実は自然検索で来るはずのユーザーを有料で獲得しているだけ」という批判がある。広告費の正当性評価をどうするか、という問題で、多くの担当者が悩んできた。
AI Maxがブランド・非ブランドの分離を強化するとしたら、少なくとも「ブランドの力で来た人」と「広告で来た人」を計測上分けて考えられるようになる。予算のアロケーションをよりクリーンに議論できるわけで、これはCFOへの説明責任という観点でも意味がある。
ただし現時点はテスト段階。実際に全アカウントに展開されるか、インターフェースが変わるかは未定。運用担当者としては「来たときに即動ける」状態にしておく、くらいの温度感で情報収集しておくのが現実的。
出典:Search Engine Land – Google appears to be testing new branded search controls in AI Max campaigns
ちなみに、5月の数字もおさえておく
Marketing Diveが5月のマーケティング注目数字をまとめていた。Kraft Heinzのマーケティング投資効果、Netflixの広告枠拡大、AIレディネスの現状という3点が取り上げられている。特にNetflixの広告スレートが広がっているのは、CTV(コネクテッドTV)広告を検討しているブランドには直接関係する話。日本ではまだ先の話かもしれないが、米国の動きを追っておくと自社の戦略議論の解像度が上がる。
出典:Marketing Dive – Go Figure: 3 big marketing numbers from May
今週のアクション
正直、今週の3つのニュースに共通するテーマは「配分の再設計」だと思う。
- AIスキルギャップ → 人とリソースの配分
- American Eagle → ブランドとパフォーマンスの予算配分
- Google AI Max → ブランド/非ブランドのトラフィック配分
「うちはどこに偏っているか」を棚卸しするだけで、今週の打ち手が見えてくる。まずは自分のチームのAIスキルマップを15分で書き出してみてほしい。誰が何ができて、どこが空白か。それだけで来週の議論が変わる。
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